普段シロアリは土の中や木材の中で生活しているので、シロアリを見たことがないという方がほとんどだと思います。よく家の周りの樹木をよく見るとシロアリの通り道を発見できますが、シロアリがどんな形でどんな生き物なのかを知らないので気付きません。

庭樹木
例えば、このようなお庭の周りに飢えている樹木ですが、

庭樹木蟻道
よくみるとシロアリの通り道(蟻道)が作られていることがよくあります。

公園樹木
また、こちらは公園の横の雑木林ですが、

公園樹木蟻道
よく見るとシロアリが枯木や倒木を餌場にしているのがわかります。

よく観察してみるとシロアリは身近に発見することができます。

このページではシロアリがどのような虫なのかを解説します。

シロアリってどんな虫?

シロアリは世界に2900種類以上が確認されていると言われていて、種類によって食べ物や棲み処に特徴が異なります。
樹木や枯れ木、落ち葉を好んで食べるシロアリや腐葉土、樹木の表面のコケ、食物の葉など食べるシロアリと様々です。
また、土の中に巣を作るシロアリ、土の中だけでなく樹木や建築木材の中に巣を作ることできるシロアリとシロアリの種類によって生息場所にも特徴があります。
このように世界の2千種類以上のシロアリには様々な特徴がありますが、日本で確認されているのは23種類で人間の住む家を餌場にしてしまうシロアリは、このうちの4種類です。学問上でいうと、ミゾガシラシロアリ科のイエシロアリとヤマトシロアリ、レイビシロアリ科のアメリカカンザイシロアリとダイコクシロアリです。イエシロアリとヤマトシロアリは土壌から建物に侵入してくることがほとんどです。土壌の巣から蟻道を伸ばして餌場を探し、基礎などの立ち上がりに蟻道を作り家に侵入してきます。営巣場所は土壌に限定されず木材の中を棲み処にすることができます。日本の住宅被害のほとんどがこの2種類です。

反対に、レイビシロアリ科のアメリカカンザイシロアリとダイコクシロアリは乾材シロアリと呼ばれ非常に乾燥に強い特徴があり、巣や蟻道を作らない特徴があります。
その為、家具などの木材から生息場所を移動したり、外部からの羽アリの飛来によって家の木材や家財を食害していくことができます。現在、乾材シロアリのダイコクシロアリは沖縄に被害が集中しており、アメリカカンザイシロアリは、輸入家具が原因の外来種であるため、局所的に被害がみられています。

※当サイトは、イエシロアリとヤマトシロアリを対象としています。

シロアリの特徴

シロアリはアリではない

ゴキブリ
実は、シロアリはゴキブリと親戚関係にあります。
シロアリは枯木や倒木落ち葉など死んだ植物を食べる種類のゴキブリの社会性が著しく発達した昆虫と言われています。
シロアリとクロアリは名前こそ似ていますが、クロアリとは全く違う分類の昆虫なのです。
卵から成虫になる成長過程でも特徴が異なり、シロアリは卵からかえった幼虫は成虫と同じ形をしていて蛹を介さずに成虫へと成長する不完全変態の昆虫ですが、クロアリは蛹の段階を介して成虫になる完全変態の昆虫です。
シロアリは、昆虫綱ゴキブリ目シロアリ科(等翅目)と分類されていてゴキブリの仲間です。クロアリはハチ目アリ科に分類されていて蜂の仲間です。

社会性

社会性
シロアリは社会生活を営んでいる生き物で、単体では生きていけません。大別すると、生殖階級、労働階級(兵蟻階級・職蟻階級)に分かれます。
シロアリには、子孫を残すために生殖活動に専念する生殖階級の王・女王アリ、外敵から仲間を護衛する役割の兵蟻、餌の採取や女王・王アリの身の回りの世話をする職蟻がいます。
女王・王アリが卵を産んで、その子供たちが餌を探したりとそれぞれの役割を持っていて、シロアリの巣は一つの家族で生きているんですね。
ただ、子供の職蟻、兵蟻などは生まれてながらに決まっていたわけでなく、幼虫の時は、自分が何の階級になるのかがわかりません。親である生殖階級の女王・王アリが階級分化フェロモンと言われるフェロモンを発して、その巣(家族)の中で何のシロアリになるかを調整しているんですね。
また、職蟻や兵蟻の他にも、ニンフや副女アリ王副王アリという生殖階級がいますが、親の女王、王アリが病気で弱ってしまったり死んでしまったときでも子孫が途絶えないように備えています。
また、ヤマトシロアリには蟻職蟻(ギショクギ)と呼ばれる階級分化できる能力を持った職蟻がいて、巣の危機があった場合に生殖階級に分化して子孫を存続させる役割のシロアリがいます。

食べ物

シロアリは木材中のセルロースという成分を分解して栄養として生きています。
このセルロースは分解しにくい性質なのですが、シロアリの体内には原生虫という微生物によって分解されていると言われています。

木質繊維にはセルロースが含まれているので、本や家具、新聞、着物があればシロアリは餌場としてしまうことがあります。
コンクリートやプラスティックを食べるということも聞きますが、これは、餌として食べている訳ではなく、噛み砕いているというのが正しいでしょう。

シロアリの一生

女王、王アリの寿命は10年以上に及び、長いことで知られています。その間、女王アリは1日に数百個の卵を産んでいます。
職蟻、兵蟻の寿命は、2年前後と言われています。

シロアリの生息分布図

shiroari_bunpu

シロアリは土地の気候や生態の特徴によって生息する地域が違います。ヤマトシロアリは日本全土に分布していますが、イエシロアリは九州全土の他、本州は瀬戸内など海外沿いを中心に分布しています。また、山口県下関市と福岡県北九州市の関門海峡周辺にはヤマトシロアリの一種のカンモンシロアリが分布しています。家具などから移動する外来種のアメリカカンザイシロアリはその生態の特徴から局所的に分布しています。ダイコクシロアリは奄美大島以南の沖縄県や東京都小笠原諸島に分布しています。

ヤマトシロアリ

ヤマトシロアリ写真

ヤマトシロアリは全国的に分布しているシロアリで、土壌や木材中に生息するシロアリです。比較的湿った環境を好んで営巣する傾向があり、食害場所も地表から近い1階部分が主な場所です。ヤマトシロアリは兵蟻の頭の形が長方形であるのが種類を見分ける時のポイントです。巣内の個体数は2~3万匹と言われますが、少数の職蟻から新たな巣を形成する能力を持っているため、加害場所自体が営巣であると言えます。地下シロアリとも言われ、建物へは土壌から侵入してくるケースがほとんどです。

イエシロアリ

イエシロアリ写真

イエシロアリは、土壌だけでなく小屋裏や壁の中等の建物に加工した大きな塊状の巣を作る力を持ったシロアリです。水源さえあれば乾燥した木材であっても水を運んで湿しながら食害していくため、床下だけでなく、天井裏まで被害が及ぼすことができます。イエシロアリは兵蟻の頭の形が卵型である他、刺激をすると額かた白濁液を分泌して威嚇する特徴があることが種類を見分ける時のポイントになります。ヤマトシロアリと同じく地下シロアリに属し、土壌から建物に侵入してくるケースがほとんどです。

羽アリについて

ヤマトシロアリ_羽アリ

ヤマトシロアリの羽アリ

春先からゴールデンウィーク当たりの日中に群飛

イエシロアリ_羽アリ

イエシロアリの羽アリ

5月下旬から梅雨明けくらいまでの夕刻に群飛

羽アリは、コロニーがある一定の規模に成長すると、ニンフが羽を生やして、新しい場所で生殖活動を行い子孫を残すために飛び立ち「結婚飛行」をします。
巣に危険を感じたときに営巣場所を変えるために巣別れをする場合もありますが、ほとんどの場合が、コロニーの発達による巣別れ「結婚飛行」です。

シロアリの羽アリの群飛時期は、シロアリの種類と地域(気候)によって変わります。
ヤマトシロアリの羽アリは、3月頃から5月中旬頃の日中、イエシロアリの羽アリは梅雨時期の夕刻頃に群飛します。

羽アリが飛行できる時間は長くなく数十分程度です。
陸に降りた後は、羽を落として、雄雌の2匹が対になり、生殖活動ができる営巣に適した場所を探して潜ろうとします。

ほとんどの羽を落とした羽アリが外敵の餌となったり、ペアとなって営巣場所に辿り着けず、乾燥して死んでしまいますが、一部の生き残った羽アリのカップルは、生殖活動を始めて、やがて数万、数十万の大家族となります。

シロアリ被害について