シロアリ駆除には薬剤散布を行わずにシロアリの巣を駆除する方法があります。
シロアリが好んで食べる成分と脱皮を阻害させる薬を含有したベイト剤を蟻道(白蟻の通り道)や建物の外周に設置して白アリを駆除をするベイト工法と呼ばれる方法です。
この記事では、何故、ベイト工法が薬剤散布を行わずにシロアリの巣を駆除できるのか、イエシロアリに対して有効な駆除の方法なのかをご説明します。
シロアリ駆除をやっている業者の中にもベイト工法の理論を分かっていない業者もいます。業者の言われるままになって白蟻駆除に失敗しない為にも、ベイト工法について理解されてください。
ベイト工法は目的によって方法が違う
ベイト工法にも、その目的によって方法が違います。
具体的には、シロアリの発生している状況で駆除する場合と、シロアリの発生を予防する場合です。
また、シロアリが発生している状況でも、シロアリの侵入経路や被害場所が特定できない場合もあります。
その状況、目的によって、ベイト工法の方法も変わります。
ベイト工法には2種類あります。
1、駆除の為のベイト工法
シロアリの通り道にベイト剤を仕掛けて建物に侵入をして、現在、建物に侵入しているシロアリのコロニー(巣)を駆除するための方法です。
駆除が終われば、ベイト剤は撤去します。ベイト工法による駆除完了後はシロアリの再侵入を防ぐために薬剤散布による予防施工を行うことが一般的です。
但し、このタイプのベイト工法は特定の巣を持たないヤマトシロアリやカンザイシロアリには有効な駆除方法ではなく、イエシロアリという特定の巣をもつ白蟻に対して有効な方法ということを知っていてください。(何故なのかは後ほど説明します。)
2、シロアリの侵入を予防する為のベイト工法(維持管理型)
シロアリが建物に侵入をしない為に、家の周りに概ね3メートル間隔でステーションと呼ばれる餌木やベイト剤が入った筒のようなものを埋めて、薬剤の散布をせずに白蟻を予防する方法です。
2~3か月に一度ステーション内の点検に訪問をし、シロアリが餌木に喫食していればベイト剤を投入することが主流でしたが、最近ではダウケミカル社のセントリコンシリーズのように耐久性の高いベイト剤を初めから投入しておく商品もみられます。
この記事では駆除の為のベイト工法について詳しくご説明していきます。
ベイト工法は兵糧攻め
それでは、ベイト工法を理解するために、まずシロアリの簡単な白蟻の生態についてご説明します。
「白蟻」と一言でいいますが、白蟻には主に「女王・王(生殖階級)」「兵アリ(兵蟻階級)」「職蟻(職蟻階級)」で成り立ち、それぞれの階級に役割があって集団で生きている生き物です。
生殖階級や兵蟻階級の白蟻は自分で木材を加害して食べることができないため、職蟻階級の白蟻は木材を加害して自らの栄養にするだけでなく、他の階級白蟻に餌を分け与えます。そして、この仲間に餌を分け与える職蟻は年に数回脱皮をする特徴があります。
さて、ベイト工法の仕組みですが、
ベイト工法は、この白蟻の社会的な集団生活と職蟻の脱皮に着目して開発された駆除の方法です。
白蟻(職蟻)の通り道にベイト剤(脱皮阻害剤)を仕掛けて職蟻に食べさせると、白蟻は仲間同士で餌を分け与えるため時間が経つと巣全体に薬が回ります。
するとある時期になると職蟻は脱皮ができなく死んでしまい、残された階級の白蟻(生殖階級・兵蟻階級)は餌を食べることができなくなります。
つまり、職蟻が死ぬと他の仲間のシロアリは餓死するため巣ごと駆除できてしまうのです。
ベイト工法のイメージは、敵国の食料庫を攻撃して飢え死にさせる兵糧攻めのような方法でしょう。イエシロアリの場合は敵国が特定しているため、このような兵糧攻めが有効なのですが、ヤマトシロアリの場合だと、少数の白蟻王国が無数にある場合があり、また、ひとつの国から独立して新たな国を形成していくことができるため、兵糧攻めは有効ではないのです。
(※ベイト工法の理論についてシロアリ業者であれば当たり前に知っていることなのですが、中にはわかっていない方もいるようです。業者を選ぶ時は何故ベイト工法で駆除できるのかについて明確に答えれるか確認してください。)
確実にシロアリ駆除を行うなら専門業者
ちなみに、このベイト剤は、ホームセンターでも市販されています。(※業務用は市販されてません。)
シロアリ調査に行くと、ホームセンターで市販のベイト剤を購入して自分で駆除を試みた方もよくおられますが、白蟻の生態やベイト工法の原理を理解されていないため駆除を失敗してご連絡いただくことが多くあります。確実に駆除するために早めにプロに依頼されることをお勧めします。